第4話「PRって、誰がやるものなんでしょう?」

その日、二人のおじさんは社内の資料室にいた。
古いパンフレットや資料が詰まった段ボールを整理しながら、自然といつものように会話が始まる。
イタ「ニシオカさん、そもそもPRって……誰がやるもんなんでしょうねぇ」
ニシ「そりゃ、広報部とか、社長とか、SNSうまい人とか……そういう人がやるって思ってましたよ、ぼくは」
ニシオカさんは、古びた冊子『ザ・バイヤー』を手に取りながら答える。
イタ「でも昨日AIちゃんが、“語るのはあんたたちやで”みたいなこと言ってましたやん」
ニシ「言うてましたね。“伝える役割は誰かの担当じゃなくて、文化として広がるべきだ”って」
そこへ、上の棚からまたもぬるっと現れるAIちゃん。
AIちゃん「そうそう!おじさんたち、まだわかってないね。“誰がやるか”って考え方自体が、もう古いの。PRはね、“誰かがやってくれるもの”じゃなくて、“あなたの存在がもうPRになってる”ってことなの!」
イタ「えっ、ぼくがですか?」
イタルさんは驚いたように首をかしげる。
AIちゃん「うん、イタルさんが普段やってるあの“気遣いの一言”とか、ニシオカさんがちょくちょく“安心感を生み出すためのアホのふり”とか。
あれ、社内の人は見てるし、ちゃんと“語られてる”んだよ?」
ニシ「……でもそれって、仕事っていうより、ただの習慣ですけど」
AIちゃん「でもね、それが“信頼を積み上げる物語”になるの。気づかれなくても、地層のように社内文化をつくってるんだよ」
イタルさんは、少し照れくさそうに言った。
イタ「たしかに、PRって“語らせること”なんやったら……“行動そのもの”が、その材料になるってことなんやな」
ニシオカさんも笑う。
ニシ「じゃあ、“ぼくら自身がPRそのもの”やってことですね」
AIちゃん「正解!それに気づいたあなたたちは、もう立派なPR初心者……いえ、PR文化発芽組ってとこかな!」
そんな会話のあと、3人は笑いながら資料を棚に戻していった。
……と、そのとき、
資料室の扉の向こう、廊下の奥を歩くシルエットがひとつ。
イタルさんが何気なくちらっと目をやる。
イタ「……あ、最近あの人、よぉ周り観察してはるんですよ」
ニシオカさんがひそっと言う。
ニシ「え、もしかして……“次に語る人”になるとか?」
AIちゃんは、にやりと意味ありげに笑った。
AIちゃんの今日のまとめ:
「PRは“あなたが語ること”から始まる。すでに、あなたは物語の一部なんだよ」

▶第5話「PRは“外に向ける”だけのものですか?」
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※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。