第5話「PRは“外に向ける”だけのものですか?」

昼下がりの屋上。
少し風が強く、空はどこまでも青かった。
作務衣姿のイタルさんが、コーヒーを手にしてベンチに腰かけている。
その隣には、サーフブランドのロゴが入ったTシャツ姿のニシオカさん。
ニシ「イタルさん、最近PRの話ばっかりしてる気がしますけど、そもそも“誰に向けて”なんですかね?」
イタ「うーん……やっぱり“外”ちゃうかな。“社外”とか、“顧客”とか。」
ニシ「じゃあ社内の人たちは、完全に蚊帳の外なんですかね……」
(ドアが開き、スーツ姿の男性が静かに現れる。浅黒い肌、うっすら口ひげと顎ひげ。落ち着いた雰囲気。)
テツ「失礼します。少しだけ、会話に混ぜていただいてもよろしいですか。」
イタ「あ、テツさん。もちろんです。」
テツ「おふたりが今お話しされていたこと、少しだけ耳に入ってしまいまして。実は私は以前、プロレス団体の現場でディレクションを担当しておりまして。」
ニシ「えっ、プロレスですか?」
テツ「はい。スポンサーのロゴ配置、照明の演出、登場順の設計……どれひとつとして偶然ではなく、“空気をどう作るか”を徹底的に考える仕事でした。」
イタ「なるほど……PRって、“伝える”んやなくて、“伝わる場をつくる”ってことですね。」
テツ「その通りです。PRは単なる情報発信ではなく、信頼の環境設計です。ですから、社内や仲間にどう響くかという観点も、本質的にはPRと無関係ではありません。」
(風がふわりと吹き抜ける)
AIちゃん「ふふっ、“信頼の設計”って言葉が出るとは。なかなか筋がいいじゃない。」
(ふいに現れた小さなAIの姿。雲の影のようにひょこっと立っている)
ニシ「あれ、また出てきた……」
AIちゃん「理解が深まると、私も呼ばれてしまうんだよね〜。ほら、PRって“魔法”じゃない? 伝え方ひとつで、空気まで変わる。」

▶第6話「見えない“現場”がつくる空気」
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※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。