屋上のベンチ。午後の日差しが、ビルの隙間から差し込んでいる。
イタルが缶コーヒーを手に、ゆっくり息を吐いた。

イタ「テツさん、ちょっと気になってることがあるんです」

テツさんが「どうぞ」と、穏やかにうなずく。


イタ「最近、朝の社内Slackがなんか冷えてるというか……誰も悪くないんですけど、“おはようございます”って言葉も、だんだん形だけになってる感じがして」

ニシオカさんも口を挟んだ。
ニシ「“流しとこか”って雰囲気、ありますよね。心が入ってない、みたいな」

テツさんは少しだけ考えてから、ゆっくり口を開いた。

テツ「それ、いちばん繊細な変化ですね。
誰かが意識的に悪いことをしているわけではないのに、
“空気”が微妙に濁っていくような感覚。
私はそれを、“見えないPRの崩れ”と呼んでいます。」

イタ「見えないPR……ですか?」
イタルさんが聞き返す。

テツ「はい。PRは“目立つ言葉”だけではありません。
むしろ、習慣や振る舞い、黙っているときの表情といった“無言の行動”が、
日々、組織全体の“空気”をつくっているんです。」

ニシ「つまり……Slackの“おはようございます”の雰囲気も、
社内に流れている“PR”の一部ってことですか?」

テツ「そうです。誰もが“発信している”つもりがなくても、
その場にいるだけで“何かを伝えている”んですよ。
PRって、“話すこと”ではなく“存在の仕方”でもあるんです。」

AIちゃんがにょきっと現れた。
AI「ふふふ、“いるだけで伝えてる”って、なかなか詩的でしょ?
でもね、たいていの組織が、言葉よりも空気の方に影響を受けて動いてるの。
だから、“意識してつくられた空気”は、最高のPRになるのよ」

ニシオカさんが空を見上げながらつぶやく。
ニシ「そう考えると、“目立たないところでやってること”ほど、大事ってことかもしれないな……」

その横で、テツさんはにこやかに、でも少しだけ引き締まった顔でうなずいた。
テツ「“設営”の本質ですね。見えないところを、ちゃんと整える。それが信頼の土台になります。」

風が吹いた。午後の光の中で、誰もが少しだけ背筋を伸ばしたように見えた。


AIちゃんの今日のまとめ:
PRは発信だけでなく、存在の仕方。
社内の空気感や日々の振る舞いが、“信頼される組織”をつくる無意識のPRとなる。

PRって、“話すこと”ではなく“存在の仕方”でもあるんです

▶第7話「なんで『数字』って語られないんでしょう?」

 

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 ※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。