第10話「PRって、バズらせることですか?」

その日、4人は近くのカフェテラスでお茶をしていた。
ゆめ「うちの商品をなんとかバズらせたいんです!って言われた時点で、うちのカスサポは背筋が凍るんですよね」
ゆめちゃんが苦笑いを浮かべながら言う。
ニシ「あるあるっすね」
ニシオカさんが頷く。
ゆめ「しかも“明日の朝までに”とか言われるんすよ。どんな魔法使えと。」
イタ「でもまあ、気持ちはわかるんよなぁ。注目されたいっていう欲望は、どこの会社でも、どこの部署にもあるしね。」
イタルさんはカップを傾けながら、優しく続けた。
AIちゃんはスプーンでカフェオレをかき混ぜながら、目も合わせずに口を開いた。
AIちゃん「バズは“炎”よ。あっという間に燃えて、あとには灰だけ残る」
イタ「うっ……なんか見たことある光景やわ……」
イタルさんの目が遠くなる。
ニシ「でもさ、それで一瞬でも注目されて、そこから繋がる関係もあるんちゃう?」
ニシオカさんがフォローを入れると、ゆめちゃんが静かに口を開いた。
ゆめ「うん、あります。でも、バズで来た人は、“熱が冷めたら離れていく”ってことも、最初から分かっておかなあきませんね。“関係性”を築くには、継続的な温度が必要ですもん」
AIちゃんがニヤリと笑って言う。
AIちゃん「そう。“継続的な温度”こそが、PRの本質だと思ってる」
イタルさんは小さくうなずいた。
イタ「俺らがほんまに目指したいのは、信頼されて、何かあったときに“思い出してもらえる存在”やもんな。パッと火がつかんくてもええ。ジワジワと芯からあったまるような、そんなPRを育てたい」
ニシ「さすがイタルさん、今日の言葉はじんわりくるっすね」
ニシオカさんがカップを掲げて乾杯のジェスチャーをする。
ゆめちゃんも微笑みながら言った。
ゆめ「炎は、つけるより“保つ”方が、ずっと難しい。でも、だからこそ価値がある。“信頼の火種”は、たぶんそこから生まれるんやと思いますよ」
カフェの湯気と陽だまりの中で、4人の想いが静かに交わった。

▶第11話「小さな行動は、PRになりますか?」
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※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。