月曜の朝。会社の給湯室。イタルさんが静かにポットの水を替えている。

イタ「……あ」

ニシオカさんがそれに気づく。


ニシ「おお、イタルさん、やっぱりこういうの、さりげなくやるタイプっすよね」

イタ「いやいや、気になっただけや。たまたまよ」

ニシ「たまたまって、毎週同じ時間にやってますやん」

ゆめちゃんが後ろから笑いながら入ってきた。

ゆめ「私、見てましたよ。イタルさん、ペーパータオルの補充もしてくれてましたよね?」

イタルさんはちょっと照れくさそうに笑う。

イタ「いやぁ、なんか……気になるんや。『ここ、誰かやってくれてたらええのにな』って自分が思ったことは、自分がやったらええんちゃうかなって」

AIちゃんが現れ、キッチンの台にちょこんと座る。


AIちゃん「イタルさん、それ、まさにPRやで」

イタ「えっ!?どこがやねん」

AIちゃん「“誰にも気づかれない仕事”って、見えにくいけど、“安心”とか“信頼”をつくる根っこになってる。つまり、“人の印象”をつくる行動。それってPRやん」

ニシオカさんが頷く。

ニシ「たしかに。“あの人がいると空気がいい”って思われる人って、大体そういう行動の積み重ねでできてますよね」

ゆめ「うん。で、それが“言葉”になって、社外にも伝わると、“あの会社って信頼できるよね”になりますよね」
ゆめちゃんが言う。

イタ「なんや……すごいな。俺、自分のやってることがPRになるなんて、思ったことなかったわ」

AIちゃん「それが一番強いんよ」
AIちゃんが言う。

AIちゃん「狙ってないPRほど、リアルで強い。小さな行動は、“会社という人格”をつくっていく。だからPRって、“人となり”やねん」

イタルさんは給湯室の蛇口を閉め、ふぅっと小さく息をつく。

イタ「なんや、急に誇らしなってきたわ」

AIちゃん「でしょ?」
AIちゃんがニヤリと笑う。

AIちゃん「ただの“水を替える人”が、“信頼をつくる人”になる瞬間って、たぶん、そういうことやねん」

ゆめちゃんが最後にぽつりとつぶやいた。

ゆめ「“伝えたい”ことって、案外、“伝えようとしてない”ときの行動に出るよなぁ」

4人の視線が、静かに交差する。

“誰かのために動く”という、ささやかだけど確かな行動が、
PRという“無言の物語”を編んでいくことを、彼らは少しずつ理解しはじめていた。


ニシオカさんイケオジ路線かな。

▶第12話「“うちらしさ”が伝わる瞬間って?」

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 ※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。