イタ「なあ……“うちらしさ”って、どうやったら伝わるんやろな?」

イタルが、縁側で足をぷらぷらさせながら言った。春の光がやわらかく庭を照らし、風がカーテンをふわりと揺らす。


ニシ「唐突ですねえ。でも、まあ……“らしさ”って言葉、便利すぎて難しいですよね」

ニシオカはアイスコーヒーをくるくる混ぜながら、ぼんやり庭を眺めている。

イタ「“この会社らしいなあ”とか、“この人らしいわ”って言われるとき、何がそう感じさせてるんか、よう考えたらわからへん」

ニシ「うん。でも逆に、そう言われるとちょっとうれしいですよね。無理してないのに、なんか伝わってる感じがして。」

AIちゃんは縁側の柱にもたれながら、小さくうなずいた。

AIちゃん「“らしさ”って、演出できないんだよね。表に出そうとして出せるものじゃない。生活とか、空気の積み重ねがにじみ出たものだから。」

イタ「なるほどな……無理して作ろうとした瞬間に、“らしさ”が消えるってわけか」

ニシ「そうそう。たとえば、うちらの社内報に入ってる“ちょっとした雑談”とか、“社員のつぶやき”みたいなコーナー。ああいうのが実は、いちばん“らしさ”を伝えてる。」

イタ「うちの“うちらしさ”って、なんなんやろな……」

ニシ「なんか、“文化のある余白”って感じがします」
ニシオカが笑った。

イタ「余白……?」

ニシ「うん。詰めすぎてない。でも、ぼんやりしてるわけでもない。なんか“ちゃんと考えてるけど、力が入りすぎてない”っていうか。」

AIちゃんはちょっと照れくさそうに目をそらしながら、ぼそっと言った。

AIちゃん「……その感じ、わたしも好き。」

縁側に、ちいさな沈黙が生まれた。風が吹いて、風鈴がちりんと鳴った。


イタ「そっか。“らしさ”って、がんばって伝えるものやなくて、“出てまうもん”なんやな」

AIちゃん「うん。“らしさ”は文化のにおい。たぶん、わたしたちが思ってるより、ちゃんと届いてるよ。」

ニシオカさん前より大きくない?

▶第13話「信頼される会社って、どこで決まるんでしょう?」

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※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。