第26話「社内イベントって、意味あるんですか?」

みなみ「……正直、また“オンライン社内イベント”って言われても、テンション上がらないんですよね」
夕方の打ち合わせ帰り。みなみちゃんがマスクを少しずらしながら、エレベーターホールでぽつりとつぶやいた。
ニシ「それなー」
ニシオカが大きくうなずく。
ニシ「“またZoom飲み会?”って感じ。気ぃ遣うし、正直ちょっと疲れる。」
イタ「せやけどな」
イタルが腕を組んで言った。
イタ「ワシ、あの“さつまいもクッキング選手権”、いまだに話題にされるねん。“あれ楽しかったです!”って、外の人にも言われる。」
みなみ「え、あれ?あれそんなに評判良かったんですか?」
みなみちゃんが意外そうな顔をする。
イタ「イベントってな、“成果”じゃなくて“感情記憶”が残るんやと思うで」
AIちゃん「“そのとき誰と笑ったか”っていう記憶だけが残って、気がつけばそれが文化になってるってことだね。」
ニシ「それ、いいこと言うなあ」
すると、また窓の向こうに、
ビル3階と目線を合わせる影が、ふわりと現れる。
みなみ「……来ましたね」
みなみちゃんが笑う。
ユウだった。
夕焼けの逆光に、巨大な姿が静かに浮かんでいる。
ユウ「文化とは、共有された“感情の履歴”です。」
その声は、なぜか今日は少しやわらかく聞こえた。
ユウ「“何をしたか”ではなく、“どんな気持ちだったか”が、社内に漂い続ける。それが“社風”の正体になる。」
イタ「……イベントって、評価されるためにあるんじゃなくて、覚えてもらうためにあるんやな」
ニシ「忘れられない出来事って、だいたい“偶然うまくいった失敗”だったりしますよね」
みなみちゃんは静かにうなずいた。
みなみ「そういえば……去年の“オンラインだるまさんがころんだ”とか、めちゃくちゃだったのに、いまだに話題になってますよね……」
AIちゃん「なにそれ」
AIちゃんが吹き出す。
ユウは、最後に一言だけ付け加えた。
ユウ「意味は、あとからついてくる。」
その瞬間、夕陽の光に照らされて、窓ガラスに反射したユウの輪郭が、一瞬だけ金色に見えた。
その光景を、みなみちゃんは、なぜか忘れられなかった。

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※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。